俺。

 俺の父の妹のさよこ叔母。

 その娘のしより。

 俺の父母はすでに亡く、さよこ叔母の夫、つまりしよりの父親もしよりが生まれる前に他界している。

 つくづく、菅坂家は肉親運がないらしい。

 ――そして、目の前には、磨かれた四角い墓石。

「久しぶり、馨也(きょうや)」

 しよりが手にした花をふたつにわけて、墓前に飾る。

 俺は、借りてきた柄杓で、墓石を流してやった。

 俗に云う、一周忌。

 もう少し経ったら、うちんちが無駄に金を払いまくっている坊主が来て、判別不明の経をあげてくれる予定、らしい。

 全てさよこ叔母の差配。こういう時、未成年は無力だ。

 『こんなのなんの意味があるんだろな。

 もう、死んじまったやつの、さらにただの骨の入れ物なのにさ』

 そう思いながら、機械的に手を動かす。

 ――それが自分の片割れとの、一年ぶりの再会だった。