ぴったりと出入口を閉めてしまえば、四角いマンションの部屋は、密封された箱みたいになる。

 脆弱な『俺』を守る、鉄とコンクリートの箱だ。

 外と内とを遮るのは、分厚いスチールの扉。

 その外側に感じるはずのない気配を感じて、俺は顔を上げた。

 時計を見れば、三時半。

 終礼を終えて学校からここまで、真っ直ぐ歩いてくれば、丁度この時間になる。

 引きこもりなるものをはじめてから毎日、頑固なまでに繰り返されるルーティン。

「しより」

 想像のなか。

 ドアノブにコンビニのビニール袋を引っ掛けて。

 ベルも鳴らさず。

 ドアも叩かず。

 ましてや俺と話をしようなんて頭から完全に追いやって。

 強情に肩をいからせて歩いていくしよりの後姿が、見える。

 『会うつもりはないわよ』、の意思表示。