「…ご褒美って、なんだよ」

 ぱっと、穂波の顔が明るくなる。

 なんて単純な奴。

「ええと、ですね…」

 ちょっと俯いて、上目遣いにちらり。

 いまさら恥じらうところが、やや厚かましい。

「追試受かったら、キス、してください」

「『再追試』、だろ?」

「う…」

 言葉につまった穂波が、本格的に俯いてしまう。

 ふわふわした髪が頬にかかり、甘い顔立ちに陰影を加える。

 こんなとき、穂波はかわいいんだな、と思う。

 性格がゴジラだろうが、行動がハリケーンだろうが、穂波は平均値以上の女子だ。

 ――つまり、これは据膳。