ふと、窓の外に視線が流れた。

「しよ?」

 バーの灯が灯り始めた、夜っぽくすすけた雰囲気の路地。

 制服姿のしよりが、速足で歩いていた。

 きちんとプレスされたスカートが、場違いにひるがえる。

「え!? ホンモノですか! どこ!」

 俺を押し退けるようにして、穂波が窓に張り付いた。

 逆に俺は、窓から身体を引きはがす。

「悪い! 釣りはいらないから!」

 赤貧中学生の財布から、ひらひら千円札が1枚。

 三分後には後悔しそうなセリフを残して、俺は店を飛び出した。