「しよ」

 部屋を出て行こうとする背中に、声をかける。

「なに?」

 長い髪を揺らして、しよりが振り返った。

「好きだ」

 答えは、ためらいのない笑顔。

 当たり前みたいにさらりと、しよりは微笑んだ。

「あたしも」

 かたちよい唇で紡ぐ、いつもの言葉。

 心地好くなまぬるい情の結晶。

 ――でも、それじゃダメなんだ。