「愉しそうなこと、やってるのね。

 あたしも、まぜてよ」

 じたじた暴れる俺に、容赦なしのコウ。

 コウのお仕置劇場に割り込んできたのは、忍び笑いと、揶揄のスパイス。

 開けっ放しの襖から、うっすら笑いのしよりが、顔を出した。

「別に俺は愉しくない」

 無表情で、ぐりぐり俺を踏んでいるコウが答える。

「ぐぇ……ッつーかいい加減、のけ……」

 つぶされた俺は、ヒキガエルばりの声を出す。

 呆れたみたいに、しよりが笑った。

「そういうところが愉しそうって云うの、コウ。

 でも、もうそろそろキョウが風呂に入らないと、母さんがキレるわよ」

 ほらほら、と軽く、しよりはコウの肩を叩く。

「ほら、キョウも」

 コウの図体をどかしたしよりが、今後は俺のほうに手を差し出してくる。

 白くて細くて、やさしい曲線だけで形づくられた手。

 ありがたくその手を借りて、俺は立ち上がった。