「なあ、穂波」

「なんですか?」

 テーブルの横をすり抜けた穂波のタブリエを掴んで、指先で引っ張る。

 うんざりした顔のくせに、敬語が崩れないのはリッパだ。ミキさんの教育、バンザイ。

「おんなじ顔のヤツがふたりいてさ~。

 一方のほうがちょっとだけ……いやかなり? アタマがいいの。

 おまえならどっち選ぶ?」

「それも、訊かれ飽きましたよ。

 何度おんなじ会話すれば気が済むんですか、キョウヤくん」

 きゃんきゃん吠えながら、でも毎度毎度付き合ってくれる穂波も底抜けに、ひとがいい。