「いい加減、おんなじことばっかり云ってるの、飽きません?

 ちなみに、あたしは飽きました。

 かなり、飽きましたから」

 小憎らしいセリフを残して、グリーンのシャツの背中が去る。

 カウンターの奥で、俺たちのやりとりを聞いたのか、ミキさんが笑ってる。

 とりあえず、手を振っておいた。

 一番安いコーヒー1杯で2時間。

 利益率の低い客の俺に、この店のひとたちはかなり寛大だ。

「だって、帰りたくないんだよ……」

 あの古い屋敷に住まうのは、俺の大切なお姫さま。

 それと――もうひとり、俺と同じ顔の騎士がいる。