すでに記憶の彼方だけど。

 たぶん、一目見たときから好きだった。

「猫系か犬系かって訊かれたら絶対に猫!

 殺人的に綺麗なんだよ、ホント」

「ハイハイ」

「綺麗なだけじゃなくて、中身も意地っ張りでかわいいの」

「ハイハイハイハイ」

 カフェ【Augasta】の、カウンター脇の席。だらしなく俺が伸びたテーブルのうえ。

 空っぽになったグラスを取って、自称『カフェの看板娘』・穂波が、レモンの浮いた水をつぎたした。

 手つきは丁寧な接客モードだけど、顔は完璧にうんざりしてる。隠していない。むしろアピールって感じ。