そうして、いま、あたしはカフェの席に座り、菅坂香也が来るのを待っている。

 ずっと一緒に暮らしていた人間と、外で会うのは奇妙な感じだ。

 でも、こうして待っている距離感に、『ああ、コウは、他の場所にいるひとになったんだな』と実感がわいてくる。

 さびしいけど、仕方ない。

 こうやって、あたしたちは変わっていく。

『ちゃんと、決着つけなさいね。

 生傷のままでいると、一生引きずるわよ』

 容赦なく背中を押してくれた貴子さんには、感謝をしてもしたりない。

 ――でも。

『……そうしないと、あたしにもチャンスが回ってこないじゃない』

 艶やかに微笑んだ貴子さん。

 あのセリフは、いったいどういう意味だったんだろう?