夏休みの1日――というよりも、ほんのひとときの惑乱が、夏のおわりのいまでも、尾を引いてる。

「あんた、そりゃあ……ダメでしょ?」

 艶のある真っ黒なショートボブの髪をかきあげながら。

 話を聞いた貴子さんは、苦笑ってた。

 貴子さんは1年のときのクラスメートで、あたしの『王様の耳はロバの耳』なひとだ。

 なにかをやらかしてしまったとき、自分だけで後生大事に抱えていると、恥ずかしさやりきれなさで、パンクしてしまう。

 だからあたしは、たいていのことはそのまま、貴子さんにゲロしてた。

 貴子さんの、おねいさまっぽさが、あたしに、それを許してくれたから。

 そうやって吐き出して、あたしはまた、自分を立て直す。

 自分のプライドに見合ったオンナであるフリをする。