『あたしのことなんか、好きにならなくていいです』

 あれはあのオンナなりの、懺悔だったのかと、いまなら考えなくもない。

「……ばかやろ……。

 じゃあ、初めから俺の前になんて、現れるなよ……」

 『そもそも、そういうセリフを吐く時点で、うぬぼれてないか?』と思い始めると、ますます腹が立つ。

 まんまと揺れてる俺は、ただのアホだ。

「ムカつく……」

 夢と夢の狭間で、呻く。

 でもあいつの存在だけが、ひどく『今』に近かった。

 それが余計に、ダマされていた身としては、腹立たしい。

「ごめんなさい……」

 浅い眠りに逃げ込む直前。

 額に、ひんやりとした心地よさと、か細い声を感じ取ったような、気がした。