生乾きの制服が、べったり身体に張り付いて気持ちが悪い。

 おりしも夕暮れ時。

 赤みをおびた薄闇と一緒に、夜気を含んだ風が流れてくる。

 少しだけ、めまいがした。

「先生」

 早く切り上げるべきと、俺は口火を切る。

「あんた、知ってた、ですか?」

 ギリギリこぼれ落ちた敬語をすくい上げてセーフ。

 自分だけ安全な飲み物を啜りながら、辻が目を細めた。

「なにが?」

「あいつが……俺の弟の、馨也の……知り合い、だったこと」

 ――『知り合い』

 本当は、他の単語が喉元まで込み上げた。

「代名詞じゃわかんねえな」

 素っ気なく突き放して、辻は今度はタバコに火をつける。