六時丁度。

 おっかなびっくり、ご親切にも壁に貼られた定型文を読み上げて、マイクの電源を切る。

 ――時間切れ。

 もう、ここにいる理由がない。

「……帰るか」

 ずっしり重いバッグを持ち上げて、自分に云い聞かせるために呟く。

 『こんな古式ゆかしい機材、盗む奴がいるかよ』、と悪態をつきながら戸締まりをして、もうそろそろ日の陰りかけの廊下に出た。

「バイトでもするか……」

 長い長い放課後をうまく使うやり方が、ちっともわからない。

 『以前』、どうやって過ごしていたのか思い出せそうもない。

「最悪……」