「意外といい奴だなあ、菅坂!

 ありがたい。ホント、助かる」

 四畳ほどの狭い空間の、積もり積もった物の狭間、ささやかな余白の真ん中で。

 この部屋の管理人・五桐が、大袈裟に両手を合わせる。

「別に、ンなにありがたがるようなコトじゃねえだろ」

 そんなに感謝されると、逆に困る。

 純粋な善意の人じゃない俺は、苦笑するしかない。

「い~やありがたいだろ?

 つか、ありがたいっす。

 バイト代入ったらおごる。

 絶対おごるからな。

 首を洗って待ってろよ!」

 勢いよく云い放って、五桐は重い防音扉の向こうに消えた。