「そうじゃなくて、そういうところだけじゃなくて、『ずるい』だろ、しぃは」

 やりくちが『サイテー』なんじゃない。

 手放したくないから必死で俺の手を引っ張る、その心根が『サイテー』。

『俺のことなんか、好きじゃないくせに』

 そう云いかけて、やめた。

 しよりが卑怯なら、俺が卑怯だって許される。

 身体もその内側も、めちゃくちゃにかきまぜるのに、セックスは有効なやり方だ。

 しよりの身勝手に乗ってみて、なにが悪い?

 俺は、俺の良心なるものを地面の底の底に埋め立てて。

 身体を転がして、今度は、俺がしよりを畳に押しつけた。

 ざり、と乾いた畳を、爪がえぐる。

「コウ……」

 ふさいだ唇から漏れたしよりの声が、悲鳴みたいに聞こえた。