突然、しなやかな身体が、ばね仕掛けの人形のように飛び掛かってくる。

 勢いよく、俺は背中から床に叩き付けられた。

 後頭部をしたたかにぶつけ、くらりとめまいがする。

「しぃ……?」

 俺の上に乗り上げたしよりが、俺の肩を手で押さえ付けてくる。

 見下ろす顔は涙でぐちゃぐちゃで、勝ち気なしよりらしくない。

 でも、いまにも崩れて、醜いものになりそうなぎりぎりのバランスで、そのときのしよりは、綺麗だった。

「泣き落としなんて、サイテーよね」

 しよりが、自分をあざ笑うような、いびつな笑みを浮かべた。