蝉の声が、やまない。

 重なり続ける音が、余計に沈黙を浮かび上がらせる。

 正座をしたままのしよりは、人形のような無表情。

 俺はと云えば、古いガラスごしの空に、あるはずのない答えを求めていた。

 『だまされていたのか』、と思う。

 同時に、『だます』ってなんだろう、とも思う。

 あいつは、黙っていただけだ。

 一年前の夏の始め、交通事故で死んだ俺の片割れ――菅坂馨也との関わりを、喋らなかっただけ。

 なにひとつ口にせずに、ただ、『好きだ』とささやいた。

 ――それだけのことで、なんでこんなに胸がきしむんだろう。