「【Augasta】、オーガスタ、ね……」

 余りピンと来なそうな思案顔で、しよりが顎に手を当てた。

 そこに、とんとん、と襖をノックする音が割り込んできた。

「コウくん、しより」

 さよこ叔母が、細く開けた襖の隙間から、顔をのぞかせる。

「折角だから、お茶しない?」

 穏やかな言葉に、呼ばれていたことを思い出した。

「あ……ごめんなさい、俺」

「いいのよ」

 両手に、小さなお盆。

 湯飲みと、季節ものの和菓子が載っている。

 固めた葛のなかに、可愛らしい魚の影が透かし見える。

「へえ、かわいいな」

 自然と、笑みがこぼれた。

「洋菓子もいいけれど、和菓子も夏っぽいでしょう?」

 やわらかく、さよこ叔母が微笑む。