そして、就業時間が終わり
鍵を閉め 外に出ると


「とおるは?」

帽子を深く被り
腕を組み私の前に立ちはだかる人に 
行く手を阻まれている。


知らない人ではない。
それは 顔を見れば
はっきり 分かる。


「去川さんなら
さっき帰りましたよ」

「やっぱ・・・か。お嬢は
とおると一緒に帰らないんだな?」

「そりゃ・・・帰る理由もないですし」

「あぁ、彼氏いたんだっけな」

「はい、まぁ・・・」


「とおると どうするつもり?」

「どうするつもりとは・・?」

「彼氏と別れる気はないって言ってたじゃん?」

「何で別れないといけないのでしょうか?」

「だから、とおると どうするつもりか聞いてんじゃん」

「どうもしないですが?
っていうか、全然 関係ないですし」

絶対、この男 誤解してる。


「でも、とおるは
お嬢の事・・・」

「は・・?」

「俺さー、あいつに
別れ話切り出されてんだよね。
で、その理由が
あんた」

「・・はい?」

「女を好きになったんだとさ」

「はぁ・・・
で、なぜに私だと結論がでるのでしょうか?」

「だって お嬢しかいねぇもん」

「いやいや、他にも
山ほどいるかと」

「じゃあ、とおると
しゃべった事ある?
車に乗った事は?
親切にされた事は?」

「それは・・・一緒の職場ですし・・」

「あいつ 興味のない人間と関わらないからね?
自分から声掛ける事もないし
車にも乗せない、親切なんてありえないしね。
で、お嬢しかいなかったってわけ」

そう勝手に決め付けられて言われても・・・