そして、勢い良く閉まる玄関の扉の音が響き渡ると


「わりぃ、うるさかったか?」


輝樹が 私の頭を撫でるように手を伸ばすと
そのまま抱きしめられた。


「輝樹・・・・?」


「んー?」


「どうしたの?」


「別に 何もねぇよ。」


そう言いながら
再び頭に手をやると
私の顔を じっと見つめ



「んなツラしてねぇで
ほら、さっさと
めし食え」


「う、うん・・・」


沈黙が続き・・・
輝樹の方に目を向けるけれど

何を話していいか分からない・・・



「あ、あの
さっき誰だったの?」


明るい声で輝樹に
そう聞くと


「んー?
あぁ・・・間違い」


「え?」


「家 間違えたってさ」


「そうだったんだ・・・」


そんな・・・
間違えただけだったら
あんなに輝樹が怒るはずないのに・・・

そう思っているのに、

それ以上 聞ける雰囲気じゃなく・・・

そのまま・・・
聞けないまま
時間だけが過ぎていった。