ミラヘノラブレター



「ヤトは戻りたい?」

「は?」

「元居た所。」

「や、別に。」

サアラは星空から目を俺に移す。
いつもには見ない、ちょっと真面目な顔だ。

「どうして?」

「興味ない。」

「いいの?好きな人とか大事な人とかいるかもしれないじゃん!」

それは俺も考えた。
最初に思ったのはそれだった。

星空を見ていると何か忘れた気になる。
大事な事を忘れている。
だから、大切な人が居たんじゃないかって。

だけど…

「や、たぶん、いない。」

「どうして?」

「居たとしたら忘れるはずがない。」

「……。どこから来るの、その自信。記憶もないのに。」

「どこだろうな?」

だけど自信があった。
大切な人が居るなら、絶対覚えてる。

記憶が忘れても。
身体が忘れても。
心は覚えてる。

絶対忘れない。

「この話は終わり。」

「……。」

ちょっと不服そうにサアラは頷いた。

「なぁ?」

「なあに?」

「お前はどうして時空を越えるんだ?」

「……言わない。」

彼女は不服そうなまま、顔をプイッと逸らす。

「…人の事は聞いておいて…。」

「私はいいの。」

「はいはい…。まぁいいけどさ。」

(なんでコイツは時空を越えるんだろう…?)