ズッと差し出されたリングを手に取る。
(……あれ…?)
気のせいでなければ見覚えがあるリングに似ている。
「どうかしたのか?」
一瞬黙った私にヤトは不安そうに尋ねる。
だけど。
思わず私もヤトに尋ねていた。
「…これ、どうしたの?」
「……"ココ"に来る前から首にぶら下げてた。だから大事なものだと思う…から…やる。」
ちょっと悩みながらもヤトは言い切った。
私はますます戸惑う。
そんなはずはない。
そんなはずないのに…。
ヤトから渡されたリングは、サクと一緒に選びに行ったリングと同じデザインだった。
もちろん、"ココ"にはないデザイン。
探し回ったけど欲しいものが無くて、結局、無理を言って特別に作ってもらった世界に一つだけのデザインだった。
「ヤト…、これ、誰かにあげるつもりだったんじゃないの…?」
「………。」
尋ねるとヤトは言葉に詰まる。
「世界に一つのデザイン。星が降るみたいな…。作りに行ったの、覚えてない?」
きっと、たぶん、間違わない。
間違えてない。
「私ね、これをあなたから、もらうはずだったの…。」
どうして気付かなかったんだろう?
大切な人はすぐ傍に居たんだ。
ヤトは私の言葉に固まっていた。
彼は"ココ"に来た時、自分の本当の名前すら覚えていなかった。
それから"ココ"に居過ぎて忘れてしまっていた。
無理もないと思う。
だけど。
ヤトは私が探していた、サクだ。
時空を越えて見つけた、私の大切な人だった。


