どうしていつも星月夜なんだろう…。

それが曇りの日だったら…
ただの夜空だったら…

きっと何にも思わなかったのに。
私だって解ってた。

私は"ココ"に居たい。
ヤトの隣に居たい。

このまま"ココ"居たら私はサクを忘れてしまう…それなのに。

ヤトの傍で笑いたい。
ヤトと星を見たい。

そう願ってしまっていた…。


「星月夜はね、星が綺麗なの。だけど月が居ない。」

私の呟きにヤトは何も言わない。
でも…聴いてくれている。

「月が居なくても星は輝くけど…本当は月が居ないと星は寂しいの。私なら一緒に居たいと想うから…きっと星は寂しい。」

昔、サクに話した時は聞き流された…けど…

「月だって…星に逢えないと本当は寂しいに決まってるだろ。」

そう言いながらヤトはギュッと抱き締めた手の力を強めた。
もう…逃げられない。

「もう一回だけ言う。サアラ、行くな。」

ヤトはそう言い切った。

本当にズルい。
そんな事言われて嫌だなんて言えない。

ヤトはサクよりズルい。
サクを忘れてしまうくらい、私の中はヤトでいっぱいだった…。


「サアラ、返事は?」

「……。」

「"ハイ"しか聴かないけど。」

「………。」

「……ハイ…は…?」

私が答えずにいると、ヤトは段々自信なさげに聴いてくる。

「ま、いいや。」

答えを待たずに、ヤトは少し私から離れて向き直った。
そのまま、首からぶら下げているものを外し、手に取って差し出した。

シルバーの鎖にぶら下がる細身のシルバーリング。

「やる。」