やっぱりサアラだ。
だけど何かがいつもと違う。
「どうしてここに?」
尋ねると一瞬哀しそうな顔をしてサアラは笑顔を作る。
「あのね、お別れを言いに来たの。」
「……。」
「戻るにはいつもの機械じゃ難しくて、マサキさんに頼んでたんだけど…さっき急に持ってきてくれて…。マサキさんって普段何もしてないみたいなのに、意外に仕事早いよねー。ほんと。」
泣きそうな顔なのに無理に作った笑顔でサアラは話し続ける。
まるで俺に喋るなと言うように間を空けない。
「もう戻らなきゃならないんだけど…でも、もう一度くらい逢いたいなーって思ってたらここにいて。ここにヤトが来るかどうかなんて解らないのにね、私ったらバカだよね。」
俺を見ず、空を見たまま。
壊れそうなサアラ。
まただ…遣る瀬無い。
「でも逢えたからビックリしたよ。私ってすごいね。詩唄う以外にも特技あったのかも…。」
「サアラ。」
こんなサアラは見ていたくない、そう思って声をかけると、サアラは一瞬だけビクッとして、また続けていく。
(聞き流しやがった…。)
サアラはまるで何かを怯えているようにも見えた。
「ヤトもビックリだよね。いないはずの私がいたりして…。」
「サアラ。」
サアラの言葉を切って、今度は聞き流せないようにしっかりと名前を呼んだ。
「……。」
彼女は親に叱られたみたいな顔をして、やっと俺を見る。
よく見ると、彼女は最初に来た時と同じ"ココ"にはない服を着ていた。
「帰るのか?」
俺の問いかけにサアラの顔はますます歪む。
「今日行くのか?」
サアラは答えないけれど、顔はまた歪む。
(そうか…今日か…。)
最初は迷惑だった。
変に時空は越えるし、ムチャクチャやるし。
俺に心配しかかけない。
それなのに…。


