「時間旅行による記憶障害だね。」
翌日、空いた時間を狙ってマサキさんに相談に来ていた。
他に相談できる人もいないし…。
時空管理もしているし、適任者だと思う。
「記憶障害ですか?」
「そう。"ココ"に居過ぎてるんだ。元居た時間から離れれば離れる程、それは起きる。」
「でも今までは…。」
「うーん。"ココ"がサアラちゃんの時間から近かったから今まで覚えていられたんだと思うよ。」
「そんな…。」
「一度忘れた記憶は元の時間に戻らないと思い出せないし、忘れた時間が長いほど戻らなくなるんだ。だからもう帰るべきなのかもしれない…。」
マサキさんは少し辛そうに呟いた。
「ヤトは…もう思い出せない。アイツは"ココ"に居過ぎた…。」
その言葉にすべてが繋がった。
だからヤトは戻りたがらないんだ。
大切な人を探さないんだ。
探せないんだ…。
大切な人を失うのと、大切な人の事を思い出せなくなるのと、どっちが辛いんだろう…。
「どうするかはサアラちゃんが決めるといい。サズと戻る為の準備はしておくよ。」
「はい…。」
戻らなきゃいけないんだ…。
戻らなければ"カレ"を忘れてしまう。
そうしたら"カレ"は世界から居なくなってしまう。
だけど…。
戻ればこの時間にはきっともう来れない。
同じ時間に行く事は可能だけど、私の居たこの時間には戻れない。
私の事を知るマサキさんもサズも…ヤトにも会えない。
もともとこの時間の人間ではないから、"ココ"から離れた瞬間に私は居なくなる。
そういう風に出来ている。
"カレ"を見つけたらそれでいいはずだった。
"カレ"がいればそれで良かった。
その為に"ココ"で自分の場所を作った。
それなのに…
どうして私…
帰りたくないんだろう…?