控室に戻るなり、溜息顔のサズがいた。
「ヤト、勝手に連れ出されては困ります。」
彼は私のマネージャー。
私をスカウトした張本人。
本当の事も知っていて、"ココ"の事を細かく教えてくれた。
「俺は悪くない。」
「解ってます。だからです。」
「……。」
時々ムチャクチャだとも思うけど…
ヤトをいつも笑顔で制す。
そこがすごい。
「コンサート会場がここなので予想していましたが…サアラ気を付けて下さいね?」
「はあい。」
だけど私にはいつも甘い。
「じゃ俺はこれで。」
「では私も失礼します。サアラも明日がありますから早めに休んで下さいね。」
―バタンッ
二人が出て行くと一人の時間だった。
窓からは星明かりがキラキラと入る。
優しい夜。
まるで唄ってって囁いているみたい…。
♪ きみ と みたい
ほしのそら
かなしいうた は
こころ で うたう
やさしいうた だけ
そらに うたう
きみ と いたい
ほしづきよ
きみ と いたい
ほしのよる
いつか
きっと
きみ に
とどきますように
そっと いのる
ほしのそら ♪
こんな歌…
唄っても"カレ"には届かないのに…。
"カレ"の事。
本当は私も忘れかけてる。
声もしぐさも覚えてるのに。
一緒に話した事も忘れてないのに。
"カレ"の顔が出てこない。


