ノックしようとした手を止めた。 中から、声が聞こえたから。 防音性の低いこのドアからは中の声が聞こえる。 女の人だ。すごく幸せそうなうわずった声。 それに、あの、バカの声。 甘い言葉。 分かっていたのに、思わず覗いてしまったのは人間の性? もちろん、予想は的中で。 私の心臓はより早く動いた。