School Daysなレクイエム!

と、裕也が指差した。

ますます増える雑踏の中だが、綺麗な青髪は目立つ。
階段下でキョロキョロしている刻重さんに俺は手を振った。

すると刻重さんはびっくりマークが頭上に出たように驚き、顔を赤らめながら近付いてきた。

小声。耳打ちするように、かつ怒気を込めて言った。

「人前で名前なんか呼ばないで下さい!」

手を振っただけですよ……

彼女は少しムッとした後、急いだ口調で

「のんきな事言ってる場合じゃないんです! 舜さんって『指揮』できるんですよね? 裕也君から聞きました!」

シキ?
あぁ、楽団の指揮ですか。
昔、少しだけ音楽関係の進路を取ろうかと考えてましたけど……
って裕也から聞いた?
そんな時間ありましたか?

「昨日聞きました。無駄話はいいから早く来て下さい! コンサートが始まってしまいます!」

コンサート?
それに裕也は昨日伸びてたじゃないですか――って


今度は刻重さんに腕を取られ連れていかれる。
おそらくエプロン姿なんかが似合うだろう、家庭的な彼女だったが引っ張る力は意外に強かった。

俺は前のめりになりながら疾走していく。
二人の様子はお姫様救出劇みたいだったが普通、逆であろう。