9月にしては涼しいそよ風が、私の頬を優しく撫でる。 私はそんな風に煽られ、ハッと我に返った。 「な、なんなのあの人……──────」 急に現れて、文句言おうとした私を黙らせて、風のように去ってしまった、あの男子。 わかってる。 勝手に黙ってしまったのは私だ。 その、見ない顔だったから。 だから、ちょっと喋れなくなっただけ。 見とれてたとか、そういうのじゃないっ!