鳩は、赤色の中にある黒い点の目でこちらをジッと見ていた。


私は、他に撮るものも思いつかなかったので、目の前にいる鳩に向けて一応撮る構えをしてみた。


ただの鳩だって、レンズ越しに見るともしかしたらすごいものになるかもしれない。

もしかしたら、の話で。



ところがその鳩は、私がカメラを構えると、テケテケと離れていく。


「あっ、ちょ!待ってっ」


私はレンズを覗いたまま、鳩を追いかけた。