10分後

慎也の手が微かに動いた。
目がゆっくりと開いた。
しばらくは天井を見ていた。

涼子さんが慎也の頬に手を触れた。

「慎也?分かる?」
涼子さんの目から涙が出ていた。

ゆっくりと涼子さんのほうを向いた。

「母さん…」

「慎也」

「母さん…ごめんね。泣かせちゃって」
手を伸ばして、涼子さんの涙を拭った。

「ううん、ううん…」
涼子さんは泣きながら首を振った。
そして、慎也の手を再び握った。


慎也は涼子さんの隣りにいるお父さんを見た。

「父さん、俺…もう頑張れない。ごめんね」

「謝らなくていい。慎也はいっぱい頑張ったよ。偉い…」
お父さんの目にも涙が溜まっていた。


慎也はゆっくりと反対側を向いた。
私と目が合った。