男、向こうを見こちらを見て追っ手を見張っている。
(女)「あなたも飲んでみて、とても冷たくて美味しいから」
(男)「ああ・・・」

男、水辺に下りていく。
水をすくいごくりと飲み込む。
(男)「ああ、とても美味しい。
水面が透き通っていて吸い込まれそうだ」

ふたり、目を見合わせて微笑む。
男、立て札に気付く。
(男)「何か書いてあるぞ?」

男、立て札を見つめる。
(男)「『飛び込むなかれ底なしの泉なり。
地下水脈にて死体は二度と上がらない』・・
古い字だなこれは」

(女)「底なしの泉なの?」
(男)「ああ、底なしの泉だ」

遠くで民兵の声。
(民兵1)「足跡があるぞー!こっちだ」

男と女は泉の裏側に回る。
民兵3人が出てくる。

(民兵2)「こんな所に泉があるぞ」
(民兵3)「飲めそうか?」
(民兵2)「飲めそうだ」

民兵1は盛んに付近を捜している。
他のふたりは水を飲んでいる。

(民兵1)「あっ、見つけたぞ!」

民兵2,3急いで身構える。
にじり寄る三人の民兵。
後ずさりする男と女。

(男)「用意はいいか?」
(女)「もちろん!ほかに道はないわ!」
(男)「よし!それっ!」

ふたり、瞬時に泉に飛び込む。
(民兵3)「あっ、飛び込んだ!」

民兵2、飛び込もうとする。
(民兵1)「あ、まて!再び浮上してきた所を
掴まえればよいから、ここで待て。
必ず浮き上がってくる」

民兵三人、じっと武器を構えて待つ。
突然、おどろおどろしい雷の音。

ー暗転ー

稲妻が光り雷鳴が轟く。
民兵三人はひれ伏す。

大きな蝶が二匹、大きくゆっくりと
羽ばたいて泉から飛び出で
上手に消えていく。

その後を無数の蝶が天空を舞い
上手へと消えていく。