「なんなんですか……二十三歳の不審死って、鈴木くんや松前さんたちですよね? あれ、みんなあなたがやったんですか……っ?」

名波は両足を踏ん張って、言った。
大きな声を出し慣れていなくて、息が乱れる。

安本は、無表情だった。

「あぁ。あれは、俺がけじめをつけなきゃいけなかったんだ」
「けじめってなんですか! どうしてあんなことっ……」
「悪かったと思ってる。加原にあんたを疑わせるようなことして」
「そんなこと言ってるんじゃありませんっ!」

悲鳴のような怒鳴り声。

だが、普段呟くようにしか話さない名波の大声なんて、声量もたかが知れている。
つまり、どれだけ叫んでも、きっとここから『りんご』へは届いていないだろうということだ。

「五人も、あんな……、どうしてあんなことができるんですか」
「けじめなんだよ、これは。他人に罪を着せて、実行犯には自殺させて、のうのうと生きてる奴らを。生かしておくわけにいかなかった」
「……え……?」

名波が、大きく目をみはる。

「じさ、つ……?」
「丸井秀平だよ。畑野優馬を殺したのは」

安本が平然と言ってのけた言葉に、名波は目を見開いたまま眉を寄せる。
それを見て、安本は目を伏せて、溜め息を吐いた。

「自分が濡れ衣着せられた事件の、真犯人も知らなかったんだな、あんたは」

その声には、同情の色が見えた。