「仕事については仕方ないの。あちこち行くなら休んだほうが楽だから。気にしないで」

 エレベーターが開いたあと、ビルの前に停まっていたタクシーに乗り込んで自宅へと戻った。

「真沙美?話していいか?」

 タクシーに乗り込んでからは、左之はずっと黙っていた。きっと反応しないとわかったんだろう。

「いいよ、何?」

「仕事についてはわかった。ありがとう」

「お礼言われるようなことじゃないよ」

 勝手に仕事休むことを決めたのに、お礼を言われると照れくさかった。それと同時に少し嬉しかった。