少し重たくて、冷たい屋上の扉を開けると、風が一気に吹き抜けた。髪の毛を耳にかけ、暗い辺りに目を見張ると、屋上の縁に腰を掛け、街を見下ろすように座る左之を見つけた。 「居た」 小さく呟くと、左之は気付いたようで振り返った。 「ん?真沙美どうした?」 左之は座ったまま、上半身を捻り私を見た。目を細め、優しい笑顔だった。 「どうした、じゃないよ。急に居なくなるから焦って・・・」 言いかけた言葉を途中で止めた。