ことの発端は三日前のこと。一人で旅行に行っていた時のことだった。

 色んな観光地を巡り、次はどうしようかと思いながら、なんとなく入ってみた裏路地を抜けると目の前にお寺が見えた。これも何かの縁だと思い、お参りするために門をくぐってお寺の中に入った。緑が多く、あちこち手入れされている綺麗なお寺だった。

 まっすぐお堂に向かい、お賽銭をいれ目を瞑り、手を合わせた。ゆっくり目を開けると、ふと足元に猫がいることに気がついた。

「にゃぁ」

 目が合った瞬間小さく機嫌よく猫が鳴いた、そのときだった。

 さっきまで人気すらなかったのに、猫のすぐ隣に人が立っていた。

「えっ」

 思わず声が出た。

 物音立てず現れたこの人はどう見ても透けていた。