「今はすぐ変わっちゃうから」 気がつくと町並みは変わっている。昨日あった建物が翌日にはさら地になり、すぐに別のものが建って、元は何があったのか忘れていく。 「死ぬまでに、一度は故郷の地を踏んでやろうって思ってたんだけどなぁ」 寂しそうに笑う左之を見て、何故か胸が少し苦しくなった。 「帰らなかったの?」 「あぁ。脱藩した身だったからな」 「脱藩って?」 そう聞き返すと、彼は苦笑いをしていた。