幽霊の思い出話


「残念ながらね」

 この家はすべてフローリングだから、畳がある部屋は一つもない。

「そうか」

 そう呟くと小さく肩を落とし、静かにベランダへと出ていった。

「すり抜けるところ見ると本当に幽霊みたい」

 まぁ、実際幽霊なんだけれど。

「ねぇ、私ちょっと寝るからね」

 背中を向けたままひらひらと手を挙げ振っていた。広い背中が夕焼けの陽によって哀愁が漂っているようだった。

 部屋着に着替えてベッドに入り込み、アラームをセットしてから少しだけ眠りについた。