「左之っ」

「どうした?」

 慌てたように駆け寄ってきた新八に少し驚いた。

「芹沢さんは?」

「さっき呑んでいた。月見酒だとよ」

 満月がこちらを見ている。俺も同じように見た。視線を新八に下ろすと、安堵したような顔をした。

「何かあったのか?」

「いや、怪しい動きがないなら大丈夫だ」

「どういうことだ?」

「土方さんが万が一に備えて様子を見ろって言うもんだからさ、念のため急いだだけだ」

「万が一?」

「新見さんの一件、芹沢さんは仕方がないだろうというように言っていたけれど、腹の底では何か報復を考えているかもしれないからって」

「なるほどな」

 でも、そんな様子はない。周りの人間にそんなことを頼んでいる様子も見当たらない。