幽霊の思い出話


「せっ、芹沢さん?近藤さんは?他にもあるのに会いに行かないの?」

 思わず、近藤さんのお墓を見た。ここに近藤さんは居ない。それならば、他のところに行ったら会えるかも知れないのに。

「いいんだ。会えなくても。言いたかったことは伝えた。もう十分だよ」

 ニッコリと笑う左之は、私の方を見ながら夕焼けの陽に目を細めた。

「でも」

「真沙美。もういいんだ。それよりも、皆に会いたい」

「左之」

「真沙美に昔の話をしたり、こうやって近藤さんに話しかけていて思ったんだ。皆と会いたい、話したいって。俺が一方的にでも、少しでも一緒に居たいんだ」

 左之は笑って、私を真っ直ぐに見た。

「真沙美、頼む。俺を、連れて行って欲しい」

 深々と、一礼した左之に驚いてすぐに肩に触れようとした。