幽霊の思い出話


 左之を見ると、目を細め、綻んだ顔で墓石に向かって何か話しかけていた。

 きっとまだ左之は来ない。そう思い再び携帯に目を向けた。

 芹沢鴨暗殺。

 私は読むのを少し躊躇った。左之から話を聞こう、聞きたいと思う反面、聞くのが少し怖いと思った。自分がいかに平和な世界で生きていたのかと、思い知らされる。

 私は人の死が苦手。まぁ、好きという人なんて居ないだろうけど。知らない人の死を聞いただけで私は泣きそうになる。だから、死が身近だった左之の話は衝撃的で、冷静に返答、反応するのがやっとだった。

 でも、そんなこと言ってられない。聞き始めた話を今さら聞かないわけにはいかない。

 何より自分自身が知りたかった。

 深呼吸し、読む決意をした。