幽霊の思い出話


 私は彼女たちの姿が見えなくなってから、お墓に近寄った。左之はじっとお墓を見つめていた。

「居た?」

「いや、居ない」

「そっか」

「でも、ここは温かいな。何人もの人間のぬくもりを感じる」

「うん」

 左之も同じことを思っていたんだろう。彼女たちの存在が嬉しかったはずだ。

「自分たちの死後、こんな風に弔ってくれるものがいるというだけで、きっと近藤さん、号泣してるだろうな。幸福者だ」

 ハハッと左之は嬉しそうに笑った。

「左之、私もこの辺掃除してくるから、ここでゆっくりしてて」

「でもさっきの子達がしてたんだろう?」

「いいの、あるかもしれないでしょ」

 何か役に立ちたい、そう思った。