「よしっ、行こう」

 左之の言葉に合わせて、閉じていた目を開けた。一体何を願ったのだろう。

「うん」

 返事をしてはっとし、きょろきょろと辺りを見回すと、人は誰も居なかった。

「良かった」

 ちいさく呟くと左之は首を傾げていた。

「どうかしたか?」

「ううん。何でもない。行こう」

 本堂の裏手へと回ると、二人程人が立っているのが見えた。

「真沙美、どうする?」

 そう話しかけてきた左之に小声で答えようとすると、そこに居た一人がこっちを見たため、咄嗟に髪を耳に掛けた。

 すぐに左之の方を見ると、左之は「わかった」と言いながら頷いた。

「こんにちは」

 こっちを見てきた女性が声を掛けてきた。二十代だろうか、あまり私と変わらないように思えた。