左之は看板を見たあと、行こうとだけ言った。

「ねぇ、首塚ってことは」

「あぁ。近藤さんは斬首されたんだ」

 私の声を遮るように話し始めた。

「あの人は、捕虜されたあと斬首されたと聞いた。塚になってるってことは、誰かが首を拾って供養してくれたってことだよな」

 左之の透けている背中を見ながら、ゆっくりとお寺の東の方へ歩いた。

 階段があり登ろうと上を見ると「誠」と書かれた、赤と白の旗が立っている場所が見えた。階段を登りながら、旗の方をじっと見ると、階段の途中にある木々の下にその旗はあるようだった。

 左之を抜かし、駆け上がるように早足で登りその旗の前に立った。

「左之っ」

 周辺の空気がとても柔らかい。心地の良い、緑の多い暖かな場所に近藤さんの首塚はあった。