「ほう。お前か?」
「す、す、すみません。わ、私共の不注意でした。お願いですから怒りを鎮めてくださいませ。お願いします。火を、火を消してください」
頭を必死に下げる様子を見ても、芹沢さんの顔色は一つも変わらなかった。
きっとこのかがり火は先程新見さんたちに言って焚かせたもの。性格の悪い男だ。
「いいや、もうかまわんさ。ここで野宿するからなぁ」
「そんなっ、すぐさま手配しますので」
悲痛な面持ちの宿役人。そうだろう。道の真ん中でこんな大きなかがり火を焚かれるなんて誰も思ってなかっただろう。
「五月蝿いっ」
そう言った瞬間、芹沢さんは宿役人を思いっきり鉄扇で殴り飛ばした。
「芹沢さんっ」
思わず声が出てしまった。宿役人は倒れたまま動かない。



