「どけ、えぇい邪魔くさい、どけ」 人混みを掻き分けながら、こちらへと進んでくる。腹の底から絞り出すような声だった。いらついて仕方がないというように、鉄扇をトントンと自分の腕に当てていた。 「近藤さんよ、一体どうなってるんだ?何をしている」 俺たちの間を割って通り過ぎ、近藤さんの元にドカドカと歩いて行った。後ろには新見さんたちがついて歩いていた。 「いや、その・・・、宿の方が手配出来ていなかったみたいなんです」 近藤さんが声を少し小さくして答えていた。