「いつもは他の人が居たから言えなかったんですが、最初からずっと気になって見てました。騒いだり駆け回ったり泣いたり、変な人だなあとも思ったりしてたんだけど、やっぱりいつも見てました。僕、休みの時だけここでアルバイトをしてるんですけど、普段は普通の高校二年生なんです。迷惑じゃなければ、お友達になって貰えませんか。一方的でごめんなさい」

 そう言って深々と頭を下げている姿は何と無く不器用そうで、それでいて何だか自分と重なるような気がすると、亜美菜は半年前の自分と同じだと思ったりもした。

「また来ます」

 
 そう言って図書館を出ると、道端に散り落ちた早咲き桜の花びらを一つ手に取り、また図書館に来る理由が出来たことが嬉しくなった。 

「やっぱり、図書館が好き」

 亜美菜が花びらを空に向けて投げると、淡い春風に乗っていつまでもユラユラと舞い続け、そして天まで飛んでいった。