あの時の言葉は謙遜だと思ってた。 

 子供扱いされた事などどうでも良い。だけど、それは不器用な断り方なだけで、フラれてしまったという現実を素直に受け入れてしまった気持ちは、もう戻ることも無い。 

 それなのに、本当にあんな奴だったなんて。あの程度の男にフラれた自分が情けなかった。

 翌週の休日は晴天だった。亜美菜はいつものように朝イチで図書館に向かって自転車を漕いだ。

 出入口が開くのを待つのも習慣となり、開館して10分後に奈々がやってくるのも習慣であった。 

「先週は雨だったね」
 奈々はそう言って亜美菜の横に座った。あれからの奈々は、ここが新たな指定席となり、いつも二人肩を並べて座っている。次第にそれもここの風景の一部と化し、誰も違和感を持つことさえ無くなっていた。