彼は、ちょっと待っててと言ってカウンターのほうへ行くと、小さな紙切れをヒラヒラとさせて戻ってきた。 

「これ、俺のメアド。何かあったらメールしてきて良いよ」

「良いよって言われても・・・」

 彼は返事を待つつもりも無いかのように亜美菜の手の平に紙切れを握らせると足早に去っていった。

 紙切れを手の平に包んだ亜美菜の肩は小刻みに震え、肩からタオルが重たそうに床に落ちると、ベチャッという嫌な音を立ててクシャクシャになった。